お客様の声・井上 亜依 先生 へのビデオインタビュー
井上 亜依 先生
東洋大学 経済学部 教授
専門分野:フレイゾロジー(英語定型表現研究)
専門分野・研究領域について
「フレイゾロジー(phraseology)」、日本語にすると「定型表現研究」という研究をしています。定型表現研究の中でも英語が対象ですので、「英語定型表現研究」が専門です。「定型表現」とは、分かりやすく言えば「フレーズ」です。言語は、文法規則に則って話される場合もあれば、文法規則を超えたかたまり、つまりフレーズで話されることがあるということが分かっています。文法規則に則った発話/言語活動と、文法規則を超えた言語活動、この両輪で私たちの言語活動は成り立っているのです。
文法規則に基づく言語活動の方は、これまでにかなり研究されてきていますが、フレーズの方は、まず何がフレーズなのかということが分かっていない。既存のフレーズは、辞書などに載ってはいますが、ありのままのフレーズが正しく反映されているかというと決してそうではありません。
ですので、これまで辞書に記載されていたフレーズの見直しから研究を始め、今は新しく観察されるフレーズに着目しています。さらに研究を進め、2018年12月に研究社から出版した『英語定型表現研究の体系化を目指して――形態論・意味論・音響音声学の視点から』の中で、新しいフレーズがどのようにできるのかを体系的に説明しました。
現在はフレーズの中でも「イディオム」を研究しています。イディオムは昔からたくさんありますが、「イディオムは変化しない」という固定観念がずっとまかり通っていました。しかし、意味的にも形態的にも変化しないと思われてきたイディオムも、実際は変化しています。イディオムが、どのように変化するのか、どこが変化するのかについての研究に今着手しており、今後それを体系的に明らかにしていこうと考えています。
研究成果の英語教育への応用
申し上げたとおり、私たちの言語活動は、文法規則に則って行う場合と、フレーズに則って行う場合がありますが、教育面から言えば、フレーズを覚えた方が効果的です。特に第二言語習得理論では、人間がものすごいスピードで話せるのは、文法規則を覚えているのと同じぐらい、状況や場面に応じたフレーズを覚えているからなのです。
日本人英語学習者は、文法知識などはたくさん持っていますが、それを使って瞬時に話せるわけではありません。文法規則を使って話せても、それが英語らしいかというと全く英語らしくない。英語らしさを伴った言語活動をしていく上で重要なのはフレーズなのです。大学では学生たちに、まずは状況や場面に応じたフレーズを教え、完了形で使うフレーズや進行形で使うフレーズといったそれぞれの文法的な要素を教える、というように段階を経た英語教育に携わっております 。
ネイティブと非ネイティブの英語の差異について
「英語らしさ」の違いは、特に論文などアカデミックなものに出てきます。あるイギリスの研究者が明らかにしているのですが、イギリスに来た留学生のどのようなフレーズの使い方がネイティブと違うかという点に着目すると、如実に差が出るのです。
アカデミックなジャーナルなどに出す場合に、内容がどれほど良くても英語らしさにかけていると採択されません。私自身もエナゴに校正をしていただく前に、自分でいろいろ論文を読み、使える表現やフレーズを書きためて、それを使って論文を書かなければ、世界に発信できないというのが現状です。
日本人研究者がアカデミックな英語を習得する方法
必要なのは日々の鍛錬や勉強です。言語の習得に終わりはないじゃないですか。言語は時々刻々と変化します。COVID-19でも様々な表現ができてきましたが、それに追いついて理解をしていくことが必要なので、日本人英語学習者、日本人研究者にとって英語はすごくネックなってきます。少しでも大変さを軽減させるため、序論(Introduction)、要旨(Abstract)、本論(Body)、結論(Conclusion) では、それぞれどのようなフレーズを使うべき、などというのを自分なりにまとめて蓄積していくことが必要ですよね。
エナゴを利用する場面
要旨=アブストラクト(Abstract)を英語で出す時と、海外のジャーナルに英語論文を投稿する時に英文校正を依頼しています。海外の英語学のジャーナルは、英語学を専門とする方々が投稿する雑誌のため、正しい英語での投稿が当たり前なんですよね。ですので、2名のプロの英文校正者に見ていただくことに、安心感があります。それをエナゴにそれをやっていただいて、いつも採択されているので本当に助かっています。
エナゴを知ったきっかけ
インターネットで英文校正会社を検索して、エナゴのホームページを見たのですが、料金体系や、どのように英文校正をしているかが一番分かりやすかったです。他の2、3社の英文校正会社に要旨(Abstract) だけの校正をお願いしたことがあるのですが、返ってきたものを見ると、あまりきちんと校正されていない感じで、私が求める内容が返ってこなかったのです。エナゴでは、いつも私が求める以上に、書き方についての鋭い指摘や「アカデミックに応じた単語の格上げ」などをしてもらえるので、ずっと利用しています。
自身が英語論文を書く際のネック
強いて言えば英語論文を書く落ち着いた時間が一番欲しいです。どの大学の先生方も忙しい中、自分で時間を調整して書いているので、私自身もうそうすればいいだけの話ですが、一度書いたものでも数週間とか置いて見直すと、おかしなところに気づくこともあるため、やはり時間が欲しいです。量を書くということも大事ですが、一本一本の論文の質というのがこれからより重要になっていくのではないかなと思います。
日本語論文の全訳は英語論文として通用するか
私は通用しないと思います。日本語の発想を、英語を書く時には抜かないと駄目だと思うのです。日本語の特徴でもありますが日本語論文はざっくりとした感じでも伝わることがあると思いますが、英語論文は、主語が何で動詞は何で目的語は何、という風に緻密に書かなければいけません。
翻訳自体はありなのかもしれませんが、翻訳に出したとしても、それを自分の目で読み、自分の内容が正確に伝わっているのか、研究者として確認しなければいけないと思います。翻訳を利用した人も、自分の名前で論文が出るわけですから責任を伴うわけです。医学などを専門とされている先生方で、時間がないとか、英語を書く訓練を受けいないないという方は、翻訳を外部に頼るのは仕方がないのとは思います。しかし(私のように)英語を専門とする場合には書けないと駄目ですよね。
自身の専門性は他分野の研究者の英語力向上につながるか
仰っていただければ教えにいきます(笑)。研究室にでも伺って、ここはこう書いた方がいいですよとか。特に理系の日本人の研究者は、ノーベル賞を取るぐらいの素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃって、後は発信の問題じゃないですか。それで私がお役に立てるのであれば、喜んでやりたいですが、なかなかその接点がありません。
内容の薄い研究を見栄えよくする記述
それは本当にありますよ。内容的にはイマイチでも、考察(Discussion)であれば、その考察を重要に見せる英語の書き方や単語の選択、フレーズの使い方などが巧みな論文があります。日本人研究者はそこで負けてしまうのです。しかし逆に発想すると、そのような見せかけで上手く書けるのであれば、その人を真似ていけばよいのです。子供の言語活動が親の言うことを真似ることから始まるように、参考になる論文や自分の研究に近い論文の中で、上手い人の書き方を真似て書いていくというのもひとつの手かと思います。
エナゴを評価しているポイント/改善してほしい点
見積もりなども早く返送してくださるし、いつも要旨(Abstract)でも論文でも、きちんと英文校正してくださって安心できるので、これからも使っていきたいと思っています。改善点というとそれは難しい質問ですね。あまりないですかね(笑)。
※動画で表示される先生のご所属先は2020年インタビュー当時のものです。2022年現在のご所属先・役職は 東洋大学経済学部 教授です。
※井上亜依先生には、研究室での英語学習法について、エナゴアカデミーでもお話いただいています。